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オークラ東京、1泊「約7万円」の新本館の狙い


39階、40階に設けられたスイートルームの広さは720平方メートルと日本最大規模を誇る(写真:G.A. DESIGN INTERNATIONAL LIMITED)

「創業の地である虎ノ門で、グループの旗艦となるにふさわしいホテルにしたい」と、ホテルオークラの荻田敏宏社長は言う。

6月25日、ホテルオークラは建て替え工事中の「ホテルオークラ東京」の本館の概要を明らかにした。開業は2019年9月上旬を予定している。

客室数は旧本館の408室から508室に増床。かつて三ツ矢式だった建物は、188メートル41階建て、75メートル17階建てという2つの高層ビルに生まれ変わる。

4年ぶりの開業が決定

ホテルオークラが建て替えを決めたのは2014年5月のこと。1962年に竣工した旧本館を2015年8月末で営業を終了し、建て替えを進めてきた。

敷地の約半分は緑地となる(写真:COPYRIGHT 2018 TANIGUCHI and ASSOCIATES ALL RIGHTS RESERVED)

新本館の客室は標準で50~60平方メートルと外資系ホテルに引けをとらない規模を確保。さらに高級ホテルでも、建物の形状から縦長の客室が多い中、ほぼ正方形に近い、ゆったりとした客室の作りをしている。

また、宴会場は20室(建て替え前の旧本館は16室)と増加。特にメインバンケット「平安の間」は2000平方メートル、向かいに設けられた「曙の間」(500平方メートル)とその間のホワイエ(約400平方メートル)を合わせれば3000平方メートル近い広大な空間を確保できる。

総工費は1100億円。借入金と自己資金でまかなう。当初は1000億円を見込んでいたが、建築費などが高騰した分は、8階~25階に設けたオフィスをSPC(特定目的会社)に売却することで捻出した。SPCにはホテルオークラと大成建設、新日鉄興和不動産が出資しており、3社でオフィスフロアを運営する計画だ。

一方で、現在も営業を続ける「ホテルオークラ東京」の別館は2020年までの営業は続けるものの、中期的な方針は未定とした。

今回、会見で明らかになったことは、オークラが追求する「高級化路線」の戦略だ。

オークラは2010年に日本航空からJALホテルズを買収。以後、客室やサービスレベルに応じて、さまざまなブランドを展開してきた。

たとえば2016年7月から運営する「グランドニッコー東京 台場」のほか、海外を中心に展開する「オークラプレステージ」といったブランドを新規に開発。外資系ホテルと遜色のない客室の広さを確保し、高付加価値戦略を進めている。

海外戦略のカギを握る新本館

2棟かならる新本館は、高層棟に「プレステージ」を368室、低層棟には自社初となる最高級ブランド「ヘリテージ」を140室というを展開する。

特にヘリテージは平均客室面積が60平方メートル以上、和を重視した内装や全室にミストサウナを備える。サービス面でも差別化を図る方針だ。荻田社長は平均客室単価は、プレステージで4.5万~5万円、ヘリテージで7万円超になると表明している。

客室単価で7万円というのは、国内の100室を超えるホテルとしてはほかに例がない。建て替え前の2013年には平均客室単価が2万円程度だったことを考えれば、同じ名前でもまったく違うレベルのホテルが誕生するともとれる。

オークラは2020年に国内・海外あわせて100軒体制を目指している(現国内47、海外26、計73)。この新本館は今後の成長を担うショールーム的な役割を担う。

荻田社長は「機会があればヘリテージブランドでニューヨークやロンドン、シンガポールや上海で展開していきたい」と表明している。

1980年~1990年代にホテルオークラ東京は専門紙で世界有数のホテルに選ばれたこともあるが、近年は新設の競合に押され、存在感が低迷していた。

再開業する新本館で高収益をたたき出し、こうした世界の主要都市に不動産を持つオーナーが、自社ビルにオークラブランドのホテルを誘致したいと思わせるだけの収益を上げられるか。海外戦略を加速させられるかどうかのカギとなる。そのためにも2019年9月の新本館の開業をスムーズに成功させる必要がありそうだ。

 


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