<米制裁関税>互いに覇権譲らず 中国も「報復措置」
- 国際
- 2018年6月16日
トランプ米政権が15日、知的財産権侵害問題を巡り対中制裁の発動を決めたことを受け、中国も同規模の報復措置で応じると表明した。今年3月以降、熱を帯びてきた米中間の通商摩擦は「貿易戦争」が避けられない事態に発展した。世界経済は大きな不安定要因を抱え込むことになる。
「米中の貿易関係を均衡させる第一歩だ」。トランプ大統領は15日、対中制裁を発表した際の声明で、今回の措置は世界経済やハイテクで覇権を争う米中紛争の始まりに過ぎないとの考えを強調した。
中国外務省の陸慷・報道局長は15日夜、「米国は貿易戦争の挑発をしている。中国は強力な反撃を加えざるを得ない」と強い不快感を示し、「即座に同じ規模、同じ強さの関税措置を講じる」と宣言した。中国は既に大豆や自動車、航空機など総額500億ドル(約5.5兆円)規模の米製品を対象にした報復リストを発表している。米国が7月6日から対中制裁を発動すれば、中国もこれらに25%の追加関税を課す見通しだ。
中国にとって米国は主要な貿易相手国であり、通商摩擦の深刻化は中国経済にも悪影響を及ぼす。5月以降、3回にわたり行われた閣僚級の米中通商協議で、中国は米国産の農産物やエネルギー資源の輸入拡大を表明するなど対中制裁回避に全力をあげてきた。習近平国家主席は6月14日、訪中したポンペオ米国務長官との会談で「貿易摩擦など敏感な問題を適切に処理し、中米関係が阻害される事態を防ぐよう希望する」と伝えた。トップ自ら行った要請を米国に一蹴された形になり、中国は態度を硬化させている。
トランプ氏は6月12日に米朝首脳会談を終え、北朝鮮対策で中国の協力を得る必要性が低下したことも、今回の制裁発動を決断した背景にあるとみられる。ただ、中国との通商問題が同氏の思い通りに進んでいるとは言い難い。
トランプ氏は当初、制裁措置をちらつかせることで中国との「ディール(取引)」を優位に進め、巨額の対中貿易赤字や知財侵害といった問題を一気に解決する思惑だった。しかし、中国はハイテク分野など産業政策の根幹に関わる要求には強い拒否反応を示し続けた。期待した成果を上げられないトランプ氏がやむなく制裁カードを切らざるを得なくなった側面がある。
「米国第一」を掲げるトランプ政権は鉄鋼・アルミニウム製品の輸入制限を巡っても、関係国の強い反発を買っている。欧州連合(EU)やカナダなどが対抗関税を表明する中、米産業界では「報復」の連鎖に強い懸念の声が出ている。一方、中国は世界貿易機関(WTO)への提訴など国際ルールの順守を強調し、米国の孤立化を図る戦略を加速するとみられる。
米中の2大経済国は世界経済への影響力が強く、両国の実体経済が傾けば全世界に波及する。「貿易戦争」への懸念から15日のニューヨーク株式市場は売りが先行する状況になっており、世界経済の先行きは一気に不透明感を増している。
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