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正恩氏、笑顔と緊張 「最高指導者の威厳」演出


正恩氏、笑顔と緊張 「最高指導者の威厳」演出(解説)

ロイター/アフロ

 (牧野愛博・ソウル支局長)

トランプ氏と初めて会った際、笑顔と緊張が入り交じった表情を見せた正恩氏。北朝鮮にとって会談の最大の目的は、「最高指導者の偶像化作業」(元労働党幹部)です。トランプ氏に位負けしないように、対等な立場に努めました。握手も、お互いが自然に手を差し出す格好を取りました。

朝鮮中央通信は11日、米朝首脳会談について、「全世界の大きな関心と期待の中で史上、初めて行われる」と説明しました。会談を最大限に政治利用したい思惑が見えます。

正恩氏が首脳外交に乗り出したのは、2011年12月の権力継承から6年以上経った今年3月からです。北朝鮮メディアは、中韓とのそれぞれ2回の首脳会談を大々的に報じ、正恩氏の業績を強調。米朝首脳会談も、正恩氏は自らの最高指導者としての威厳を保つ工夫に努めたといえます。

一方で正恩氏は、緊張した表情ものぞかせました。米国は北朝鮮の安全保障を脅かす最大の存在です。トランプ氏が会談を「この1回限りの機会」と表現したことも、重圧になっていたようです。

外交協議で北朝鮮は、事前に周到に準備した発言のみ行うのが常です。最高指導者だけは自分の考えで語ることが許されてきましたが、12日の冒頭の発言は、事前に準備していた言葉をそのまま使ったとみられます。

韓国の新聞、連日「米朝」一色(解説)

 (朝鮮半島に詳しい桜井泉記者)

韓国の新聞は連日、数ページにわたって米朝首脳会談の記事を掲載しています。また地上波3局なども朝から「世紀の談判」などと題して特別放送をくみ、米朝首脳会談一色です。

シンガポールからの中継では、「昼食会では何を食べるのでしょうか」「まさかハンバーガーは食べないでしょう」などと冗談を交え、結果が出てくるまで番組をつないでいました。

人々の関心は高まっています。

ソウル市内の45歳の主婦は、「きょう、どんな結果がでるか、期待している」と朝から興奮した様子でした。また47歳の女性会社員は「統一となれば費用がたくさんかかり、韓国の負担になるけれど、未来の世代のためにいつかしなければならないことです」と話していました。

トランプ氏、過去の大統領との違いを強調(解説)

ロイター/アフロ

 (元ワシントン特派員の佐藤武嗣編集委員)

トランプ氏は、ポンペオ国務長官らも交えた金正恩氏との拡大会合の冒頭で、「以前には解決できなかった問題を解決しよう」と強調しました。

トランプ氏は一昨年の大統領選から、貿易交渉や外交について、歴代の大統領の対応をことあるごとに批判。今回の米朝会談に踏み切ったのも、過去の大統領が実現できなかったことを自らが実行したと、アピールできると踏んだとみられます。

拡大会合の冒頭発言には、トランプ氏の会談にかける思いと意欲がにじんでいます。

ロッドマン氏、CNNで号泣

 金正恩氏と親交がある米プロバスケットボールリーグの元スター選手デニス・ロッドマン氏は12日、CNNのインタビューで、米朝会談の実現に号泣して喜んだ。

困惑した様子のキャスターに「なぜここまで北朝鮮に入れ込むのか」と聞かれると、ロッドマン氏は「最初は北朝鮮のこともよく知らず、純粋にバスケットボールのためだった。いまも政治のことはよくわからない。でも、北朝鮮が我々と共存できるようにと願っている」などと語った。(ワシントン=宮地ゆう)

 


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