それでも日経平均が2万4000円へ向かう理由
- 企業・経済
- 2018年5月20日
ここからの「戻り売り圧力」は相当強そうだ
日本株が戻り歩調だ。「上値が重い」と言われながら、ドル高円安の助けもあり、日経平均株価は、18日現在で2万2930円。ついに年初来でプラス圏に浮上した。相場格言でいう「5月に株を売れ(セルインメイ)」に反し、ここ数年の日本株の5月相場は堅調だ。一方で、株価は前回(4月25日)のコラム「日経平均株価の先行きを握る浮き島の正体」でも書いた通り、戻りの節目となる2万3000円に近づいてきた。「ゴーゴー相場」(5年連続で5月に上昇)となるのか、テクニカル面から今後の見通しを探る。
5月相場における3つの特徴とは?
「セルインメイ」はもともと米国の相場格言である。そもそもは「相場環境がそこそこ良い5月に売って、安くなることが多い秋に買え」という趣旨の中で使われている。それがゴールデンウィーク時などに日本株が急落する局面も多いことから、いろいろな意味で使われている。だが過去のデータをつぶさにみれば、異なった一面がうかがえる。5月相場の特徴として挙げられるのは次の3つだ。
① 1949年以降の騰落→35勝33敗(ほぼ五分五分)
② 1949年以降の急落→月間マイナス10%超が3回(1957年、2010年、 2012年)
③ 2014年以降の連騰→4年連続高
東京証券取引所が再開した1949年以降、日経平均株価の5月相場は決して弱くないのだ。一方で②のような株価の振れの拡大は東証の新システム導入なども影響している可能性がある。2010年、東証は高速取引に対応した売買システム「アローヘッド」を導入。それ以降超頻度取引(HFT)が繰り返されるようになり、以下のように2010年、2012年と2度の急落を招いている。
●2010年5月 日経平均株価9768円(前月比マイナス11.65%)
ギリシャ危機と米フラッシュクラッシュ(高速取引の誤発注等による株安)が重なった局面
●2012年5月 日経平均株価8542円(前月比マイナス10.27%)
欧州債務問題再燃が引き金となり、世界同時株安をもたらした局面
では③をどう説明するか。2014年4月には消費増税もあったが、なおアベノミクスによる金融緩和の追い風が続いていることが背景にありそうだ。
足元の日経平均株価は円安の流れを受けて見直し買いが入り、今年初の8週連続高につながっている。だがテクニカル面からみると、なおも自律反発ゾーンにとどまっている。2018年1月高値から3月安値に対する3分の2戻し水準(2万2967円)や2月急落時に形成した浮き島のマド(急上昇や急落時にみられる空間、2万3098円)に接近してきた。2万3000円前後での戻り売り圧力は相当強く、ここから上値は一段と重くなる可能性もある。
それでも日経平均は上昇へ?
一方、長い目でみると、需給面などテクニカル指標の一部では改善の兆しもうかがえる。それを示唆するのは日経平均株価の「移動平均線の収束」だ。2017年9月、北朝鮮情勢の緊迫化からリスクオフの流れが加速し、日経平均株価は1万9200円台まで下落していた。しかし、チャートに目を移すと、このとき25日移動平均線(短期線)と200日移動平均線(長期線)が1万9500円前後のところに集まっていた(収束)。これは値幅調整(価格)と日柄調整(時間)を経ることで短期投資家と長期投資家の買いコストがほぼ接近し、需給のしこりがほぐれていることを示していたのだ。その後、衆議院選挙での自民党大勝等をきっかけに、日経平均株価は大きく上昇。2018年1月23日には2万4124円まで上昇、4ヵ月余りでの上げ幅は約5000円まで拡大した。この高値圏で移動平均線の関係を見ると、今度は25日線と200日線は2600円程度(2万0720~2万3320円)も大きくかい離していた。その直後、米長期金利の急上昇等を受けて、日経平均株価は急落。その後の下げ幅は3500円超。短期的な上昇に踊ることなく、冷静に短期線と長期線をみている投資家にとっては、しかるべき調整にも映ったであろう。
日本株は短期でやや過熱気味でも、中期は上昇か
日経平均株価は3月23日に2万0617円で底入れした。足元では25日線・75日線・200日線が700円弱のなかに集まり、収束している。3本の移動平均線が位置している2万1600~2万2300円台は下値支持ゾーンとして意識されそうだ。
最後に今後の日経平均株価のテクニカル上の重要な価格をあげておこう(5月18日時点)。
2万4124円 2018年1月高値(年初来プラス5.97%)
2万3098円 浮き島のマド埋め(週足)
2万2967円 3分の2戻し(2万4124円→2万0617円の下げ幅に対して)
2万2764円 2017年末値
2万2371円 半値戻し(2万4124円→2万0617円の下げ幅に対して)
2万2339円 25日線(短期線)
2万1951円 75日線(中期線)
2万1629円 200日線(長期線)
2万0617円 2018年3月安値(年初来マイナス9.43%)
短期的にはテクニカル面からみた日本株はやや過熱気味か。日経平均株価は今年初の8週連続高となるなか、いったんの調整局面に備える必要もある。だが前述の通り、中長期的には移動平均線が収束しており、需給改善のサインがうかがえ、今年も「5月に株を売れ」ではなく「5月はまだ株を買っても良い」になるかもしれない。「セルインメイ」におののくよりも、相場の流れを先読みする「先見の明(センケンノメイ)」(失礼)が重要かもしれない。もしここで下落したとしても、中長期的に株高基調を続ける可能性が出てきた日本株を、下値で拾える局面が訪れそうだ。
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