運転士が足りない…路線バスが抱える、赤字以上に深刻な問題
- 企業・経済
- 2018年3月19日
「全国のバス路線の約8割は赤字」という状態ではあるが、自治体のコスト負担によってかろうじて運行されている路線バス。今年2月には岡山県を中心とした両備グループが赤字路線バスの4割を廃止すると発表するなど、崖っぷちに立たされている。さらに、交通ジャーナリストで全国のバス事情に詳しい鈴木文彦氏は「赤字以上に深刻な問題もある」と話す。
「これはバスに限らず鉄道もそうなのですが、実は赤字額を分析してみると、沿線の人が“1年にあと1回”乗れば解消できるレベルであることが多い。むしろ赤字以上に問題なのは、運転士が足りないことなんです」
バス運転士の多くは既に退職した団塊の世代を再雇用してまかなっているのが現状。なんと5年後にはバスの運転士のほぼ全員が70代になるといわれている。ある地方バス事業者は、運転士不足に苦しむ現状をこう吐露する。
「赤字か黒字かで路線の存廃を考えることはありません。赤字路線であっても地域の足として絶対に維持したい。ですが、運転士が足りなければどうしようもない。仕方なく利用が少ない路線から廃止せざるを得ないのが現状です」
この運転士不足は、赤字路線の問題とは異なり、大都市でも同様に深刻な課題になっている。
「労働環境が厳しいことはよく知られてますから、事業者による待遇改善は必須。でも、限界もある。介護士不足や保育士不足とも共通する極めて大きな問題です。国家的な課題として取り組んでいかなければ、10年後には地方の公共交通が終わってしまいます」(鈴木氏)
赤字の拡大に高速バス、貸切バスなど収益の柱の減少、さらに運転士不足と、四面楚歌の路線バス。危機を脱する手立てはあるのだろうか? 鈴木氏は、「自治体とバス事業者が協力し、地域の需要に合った形での抜本的な公共交通網の再編が必要」と語る。
「例えば輸送量の多い主要路線を軸として、そこに接続するマイクロバスやタクシーなどを活用する。運転士不足の対策として路線の効率化も欠かせません。利用者に乗り換えを強いることになっても、公共交通がゼロになるよりはよほどいい。それだけの覚悟を持つ必要があるでしょう」(同)
◆利用者の当事者意識がバス再生には欠かせない
路線バス維持のため、いち早く手を打った地域もある。自治体自ら“鉄道の廃止”を受け入れた北海道のある市では、廃線を控えて幹線輸送バスとそれに接続する交通機関の整備を進めている。
「現状に見合った輸送体制にしなければダメ。スクールバスや病院の送迎バスとの共通運用など、効率化を進めています」(同市の職員)
また、岡山県の宇野自動車では、回送を極力減らすことで民間企業で日本最安運賃を実現。1㎞あたりの平均運賃は全国で約40円前後だが、同社はなんと23円20銭だ。
「回送はフルコスト走行ですから最大の無駄。弊社では回送距離を他社の約10分の1ほどに抑えています。安い運賃で輸送サービスを提供することで、沿線に施設や住宅が増えて利用者も増えるという好循環を生み出せれば」(同社)
答えのない難しい課題だが、全国で苦境脱却に向けた模索が続く。鈴木氏は、「一番大切なのは沿線に暮らす人たちが当事者意識を持つこと」だと訴える。
「“バスはバス会社が走らせるモノ”ではなく、自分たちのバスだという意識で年に一度でも乗ってもらう。地方の公共交通を救うには、それが一番重要なこと」
果たして日本の路線バスは再生に向かって走りだすことができるのだろうか?
一言コメント
バスの運転手給料安いからなぁ・・・。
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