「18歳成人」に不安と期待と懸念と
- 政治・経済
- 2018年3月14日
■呉服業界「成人式の晴れ着減る」
■旅行業界「海外行きやすくなる」
■弁護士会「悪質商法被害リスク」
成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案と関連法の見直し案が13日、閣議決定された。大学受験とぶつかる成人式の日程のほか、18歳で有効期限10年のパスポートを取得できるようになるなど影響を受けそうな業界は、どう受け止めているのか。
「業界にとって、影響はかなり大きい」。危機感を募らせるのは、経済産業省の和装振興研究会委員も務めた着物プロデューサーの石崎功さんだ。
危機感の源は、多くの新成人が晴れ着を着る成人式の対象年齢。法律で決まった行事ではないので各市区町村の判断になるのだが、「成人式も18歳で」となると対象者の約半数は受験生。出席率は激減し、晴れ着の売り上げも落ち込むことが予想される。
石崎さんによると、呉服業界の市場規模は約2800億円。このうち振り袖は約700億円だという。成人式の出席者減少は業界にとっては死活問題となる。
豪雪地帯などでは8月に成人式を行うところもあるので、時期をずらすという方法はある。しかし、石崎さんは「8月に振り袖を着るのは暑くて無理。ずらしても振り袖の売り上げ減少には歯止めがかからないだろう」と話す。
全国1100の呉服店などが加盟する和装振興団体「日本きもの連盟」(京都市)は平成29年末、「これまで通り20歳で行うようにしてほしい」との要望書を首相や法相らに提出した。だが、自民党内で成人年齢引き下げの議論を続けてきた船田元(はじめ)衆院議員は「法改正の趣旨から、成人式の対象を20歳にするのは難しい」。その上で「これまでの党内議論で、成人式の話は全く出ていなかった。これから議論していきたい」としている。
一方、成人年齢引き下げを当て込む業界もある。旅券法も併せて見直され、有効期限10年のパスポートが取得できる年齢も18歳になる。これを好機と捉えている旅行業界もその一つだ。
若者の海外旅行離れが叫ばれて久しい。出入国管理統計によると、8年に約462万人いた20代の出国者は、28年には約281万人と、4割も減少している。こうした現状の中、12~24歳の若者がパスポートを取得すれば1万円を贈るキャンペーンを展開している日本旅行業協会は「改正されれば若者が海外旅行に行きやすくなると思う。ありがたい」と話す。
大手旅行代理店のHISも改正は大歓迎。ただし、10年パスポート取得ではなく、成人年齢が下がることで、18歳から契約に親の同意がいらなくなる点に熱い視線を送る。「今、未成年者は海外旅行をしたくても、契約には親の同意が必要なので、親が反対したら行けない。しかし、18歳から自由に契約ができるようになると、例えば『高校の卒業旅行で海外』というのも選択肢に入るので客層が広がる」と期待を寄せている。
成人年齢引き下げで、18歳から親の同意がなくても自由に契約が可能となる。東京弁護士会消費者教育部会長の高田一宏弁護士は「今後、18、19歳が悪質商法に狙われるリスクが高まると思う」と懸念する。高田弁護士らは小中高校で消費者教育の“出前授業”を行っており、そこで生徒の金銭管理の甘さや、消費者意識の低さを感じることがあるという。
消費者契約法の改正案では、不安をあおる商法や恋愛感情を利用したデート商法などは契約を取り消せる規定を盛り込んだが、高田弁護士は「足りない」と話す。「新たなタイプの悪質商法も生まれている。消費者被害を防ぐための学校での消費者教育のさらなる充実が必要」と訴えている。
一言コメント
成人は20歳のままでいいような…
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