「迷惑メール」に記者が返信してみたら…潜んでいた“二重のわな”
- 詐欺・悪徳商法
- 2018年2月19日
携帯電話やスマートフォンに届く「迷惑メール」。マジレス(真剣に返事)してみたらどうなるのか。読者に代わって、特命取材班がやってみると-。
登録してないアドレスでメールが来ましたけど私の知ってる人ですか? 私、優子といいますけど…
昨年末、記者のスマホに届いたメール。アドレスの@の後は「docomo.ne.jp」で一見、普通のアドレスだ。
「送っていません。何かの間違いではないですか」と返すと、すぐに返事が。
ごめんなさい、知り合いじゃなかったんですね。なんだったのかな。不思議な縁ですし、よかったらメールしませんか?
カフェで働く佐々木優子、22歳と名乗った。趣味はオンナ磨き。顔写真も添付されている。やりとりを続けていると、父親にスマホを勝手に見られる、という悩みを打ち明けてきた。
親にバレちゃったら会うことも出来なくなっちゃう。。。プロフ(自己紹介サイト)に連絡してくれませんか? 遊ぶ約束とかもそっちでしたい
サイトにつながるURLが添付されている。クリックしてみようかな…。
「お金目当てのケースが多い。やめた方がいい」。迷惑メールに詳しい中央大の岡嶋裕史准教授(情報セキュリティー)にたしなめられた。クリックすると、詐欺サイトや、強制的にコンピューターウイルスがダウンロードされるページに誘導される危険性があるという。添付写真は「タレントやモデル、個人のブログなどネット上の写真を拾った」と考えられるそうだ。
「どこに住んでいるの? 会いませんか?」。記者がそう切り出した途端、優子からの返信は途絶えた。
いわゆる架空請求も新手が次々と登場している。
「有料視聴分の未納料金をお支払い下さい」。米ラスベガスに本社を置くという「fc2サービス」を名乗る会社から、そんなメールが届いた。記者があるサイトで動画を5分間無料視聴した後、有料動画(1分100円)に移行する案内に了承、3日分の未払いが生じた。未納金は遅延損害金を含めて51万3600円。24時間以内に支払わないと法的手段を取る-とのこと。
ただ、身に覚えがない場合、支払わずに済む方法があるという。手数料は2万円。指示通りに「合同受付」という会社に性別、在住都道府県、携帯電話番号を送ると、新たな指示メールが届いた。(1)コンビニのレジで「インターネット代金支払い」を申し出る(2)メールに記載した13桁の支払い番号を伝えて支払う-。
取材班はコンビニ店員に、支払う直前までの手続きをしてもらった。支払先として表示されたレジの画面を見て、驚いた。ネット通販大手アマゾンの名が。
これは「コンビニ収納代行」を悪用した新手の詐欺。送信元がネット通販で何らかの商品を購入、コンビニ払いを選んだ際に通知される支払い番号を伝えてきたというわけ。つまり、送信元の買い物代を肩代わりすることになる。手数料と言いながら、そこには「二重のわな」が潜んでいた。
送信元に電話番号を聞くと、拒否された。「これは迷惑メールですか」と単刀直入に聞くと、今度は脅迫めいた返信が来た。
貴殿は約束を守らない恥ずかしい人間だと周囲に言いふらしますよ。人様に迷惑かけることばかりせず素早く対応しなさい。人としておしまいですよ
やりとりは70通以上。送信元の「正体」は分からないままだった。
総務省が相談業務などを委託する「迷惑メール相談センター」に提供された迷惑メールは2016年度、約1453万7千件。送信者が特定できれば警告できるが、「きりがない。対応には限界がある」と総務省の担当者は話す。
××
3回にわたり報告する特命取材班の「迷惑メールを追う」。(中)では実際に迷惑メールに返信して見えてきた新しい手口を紹介し、(下)ではメールアドレスが取引される実態に迫る。
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