東京の「410円タクシー」まもなく1年 短距離安く長距離値上げ 増収につながったのか
- 企業・経済
- 2017年12月27日
2017年1月30日に東京23区および武蔵野市、三鷹市のタクシーで、初乗り運賃が730円(2.0km)から410円(1.052km)へ引き下げられ、まもなく1年が経過します。
同地域では、国土交通大臣が指定した運賃の範囲「公定幅運賃」内で、事業者が運賃を選択し、届け出る仕組みが導入されています。2017年1月29日以前の公定幅運賃は初乗り700円から730円、1月30日以後は380円から410円ですが、現在、実質的にはほとんどの事業者が上限運賃である初乗り410円を適用しています。
国土交通省はこの運賃改定に際し、「短距離利用者からの運賃収入について一定の減収が見込まれることから、その減収を、中長距離利用者の運賃引き上げによってカバー」し、全体として運賃収入が変わらないようにしつつ、「タクシーを短距離でも利用しやすいものにする」としていました。国土交通省が提示した新旧運賃の比較例では、約2kmまでの運賃は引き下げ、約2kmから約6.5kmまでの運賃は引き下げになる部分と引き上げになる部分があり、約6.5km以上の運賃は引き上げになるとされています。
運賃改定後、利用者からはどのような声が寄せられているのでしょうか。東京23区および武蔵野市、三鷹市のタクシーに関する意見やクレームを集めている東京タクシーセンター(江東区)に話を聞きました。
――運賃改定について、全体的にはどのような声がありますでしょうか?
新運賃について、特段ひんぱんにクレームをいただくことはなく、全体的には「気軽に利用できるようになった」という声が多いです。新運賃が始まった当初、一般モニターの方からは「駅から家の近くまでが坂道なので、(運賃の)引き下げで利用回数が増えそう」「近距離が使いやすくなった」「手荷物が多い人には便利で、お年寄りや訪日外国人が気軽に利用できるようになる」という声がありました。
一方で、長距離は実質値上げとなるので「長距離ユーザーにとっては理解しがたい」「実際に値上げに感じた」という声もありました。ただ、現在は新運賃が浸透してきたこともあり、そうした長距離を利用されるお客様からのクレームも少なくなってきています。
――ドライバーからはどのような声がありますでしょうか?
お客様からのクレームでお話ししますと、ドライバーに「近距離(の利用)でごめんね」と伝えたところ、「近い客ばかりだと商売あがったりだ」などと言われた、という声も寄せられています。
――新しい乗客は獲得できているのでしょうか?
そのように考えています。というのは、「近くて申し訳ない」と思われるお客様は、もともと初乗り730円のころからタクシーに乗っていた方で、410円になったことで新たに乗り始めた方は、そのようには思っていないでしょう。裏を返せば、新しいお客様の利用が増えているのではないかと考えています。
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実際に、新運賃の導入によりタクシーの利用頻度や収入はアップしたのでしょうか。
東京ハイヤー・タクシー協会(東京都千代田区)の運輸資料に基づく、新運賃となる以前の2016年10月、新運賃導入直後の2017年2月、同年10月の輸送実績は次の通りです。なお、輸送回数や税込運送収入は、東京23区、武蔵野市、三鷹市の全法人タクシー事業者(約300社)の合計で、「1回当たり実車キロ」は、1回当たりの平均乗車距離を指します。
・2016年10月:輸送回数約1641万9000回、税込運送収入約304億3293万円、1回当たり実車キロ4.2km、実働1日1車当たり運賃収入4万8723円
・2017年2月:輸送回数約1588万4000回、税込運送収入約281億2671万円、1回当たり実車キロ4.01km、実働1日1車当たり運賃収入4万9238円
・2017年10月:輸送回数約1795万5000回、税込運送収入約320億283万円、1回当たり実車キロ3.99km、実働1日1車当たり運賃収入5万1261円
運賃改定後、平均乗車距離(1回当たり実車キロ)は減少したものの、1台のタクシーが1日で得る収入はアップしており、このことからも短距離の利用が増えたことが伺えます。ただ、これら実績について東京ハイヤー・タクシー協会は、「運賃改定後、全体的な傾向としては輸送回数、運送収入ともに『微増』です」といい、大きく改善された印象ではないようです。
東京ハイヤー・タクシー協会によると、現在の運賃体系は当分のあいだ続くとのこと。「この『410円タクシー』というサービスについて、今後さらなるPRを検討していきたい」としています。
一言コメント
安いのは1メーターまでなので、ご注意を。
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