“シニア割”50代に拡大…なぜ? 現役世代にも狙い、企業側の意図は…
- 企業・経済
- 2017年12月3日
一般に「シニア」は、60代以上を指すことが多い。高齢者を対象とした割引サービスの“シニア割”も同様の設定が多かったが、近年、50代でも「シニア」や「ミドル」として利用できるサービスが広がっている。少子高齢化時代が本格化し、企業側が消費に積極的な世代を取り込もうという意図もありそうだ。(櫛田寿宏)
靴店の「シュープラザ」や東京靴流通センターを全国で運営する「チヨダ」(東京都杉並区)は、55歳以上を対象に、毎月14~17日の4日間、1点1千円以上の商品が10%引きになる「ハッピー55(ゴーゴー)デー」のサービスを行っている。
旧サービスとして、60歳以上を対象とした「ハッピーシニアデー」があったが、消費に積極的な50代にアピールし、顧客の幅を広げようと、現在のサービスに移行した。担当者は「対象となる年代は見た目も気持ちも若い人が多い。だからあえてシニアという言葉を使いません」と説明する。
関西地方を中心に飲食店を展開するワン・ダイニング(大阪市西区)の焼き肉店「ワンカルビ」は、年代ごとの割引を50代の「ミドル」からスタートさせる。同社コミュニケーション推進担当の戸梶広志さんは「50代でお孫さんがいる人も多い。3世代で来店していただき、食事を楽しんでほしいというメッセージです」と話した。
東愛産業(京都市中京区)の「ジャンボカラオケ広場」は55歳以上が対象の「シニアカード」を提示すると割引料金が適用になる。利用するごとにポイントもたまり、カラオケの1千円優待券などと交換できる。TOHOシネマズやユナイテッド・シネマ、109シネマズなどの映画館は、夫婦のどちらかが50歳以上だと2人で2200円。それぞれ払うより1千円ほど安くなる。イオンの電子マネー「G.G WAON」は55歳以上が対象で、毎月15日の「G.G感謝デー」には割引特典が受けられる。
東京都内に住む50代の男性公務員はJR東日本の「大人の休日倶楽部ミドル」の会員。同社とJR北海道のきっぷが5%安くなる。「実家の仙台までの新幹線で使うと1千円ほどだが得をする。そう思うと、ためらいなく豪華な駅弁を食べることができます」と話す。
大人の休日倶楽部は、男性の場合50歳から64歳までの「ミドル」と65歳以上の「ジパング」がある。このほか会員限定のきっぷがあり、今年度であれば1万5千円でJR東の全線などが4日間乗り放題になるなどの特典がある。会員限定の旅行やイベントにも参加できる。来年2月には人気のフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマンさんを講師に、「バレンタインフラワーアレンジメント教室」を開く。JR西日本にも、50歳から加入できる「おとなび」がある。特急列車や山陽新幹線「のぞみ」などが3割引き、「こだま」が6割引きで利用できる。また、日本旅行とコラボレーションした会員向けの旅行に参加できるのも魅力だ。
いわゆる“シニア割”は、主にリタイア世代を対象としたサービスだったはず。現役世代である50代に対象が広がっているのはなぜか。宮城大の堀田宗徳准教授は「この先の人口構成を見て、層が厚くなるところをターゲットにするのが経営の基本。これからボリュームゾーンとなる世代を前段階から取り込もうとしている。会員カードを発行することで囲い込み、60代になってリタイアしてからも自社のサービスを使ってもらう意図がある」と企業側の狙いを説明している。
一言コメント
50代がシニアと言われ、複雑な気分だ。
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