インド高額紙幣廃止1年、ブラックマネーあぶり出せず
- 国際
- 2017年11月19日
■経済も減速「世界で嘲笑」
インド国内が大混乱に陥った突然の高額紙幣廃止から1年が経過した。モディ首相の狙いはブラックマネー(脱税や密輸など非合法な経済活動で動く資金)のあぶり出しだったが、現状では成功とは言い切れない。紙幣廃止を経済停滞の原因として指摘する声も多く、“奇策”がインドにもたらす影響が注目される。
モディ氏は昨年11月8日夜の演説で、翌9日に1000ルピー(約1700円)紙幣と500ルピー紙幣を廃止すると宣言した。日本で言えば五千円札と一万円札が突然使用停止になるのと同様の衝撃だ。
紙幣は一定期間内に金融機関に預け入れるか、新紙幣と交換しなくては紙くずになってしまうことから、決済の90%以上を現金に依存するインド社会は大混乱に陥った。
モディ氏が大なたを振るった主な理由は、ブラックマネーの撲滅だ。インドは政府が把握できない違法な経済活動が国内総生産(GDP)の20%以上を占めるという。贈賄や不正行為の原資となるほか、テロの資金源とも指摘される。価値の高い紙幣を無価値とすることで、現金で蓄えられている不正な財産を使えなくしようという考えだった。
ところが1年が経過した評価は思わしくない。印シンクタンク、ブルッキングス・インドセンターのサヒル・アリ客員研究員は産経新聞の取材に「各種の数字は政策の失敗を示している」と話す。
インド準備銀行(中央銀行)が8月に発表した報告書によれば、紙幣廃止で金融機関に持ち込まれた旧紙幣は15兆2800億ルピー(約26兆3千億円)に達したが、これは流通量の99・8%に相当する。少なくとも3兆ルピーが破棄されることが見込まれていただけに「不正資金の撲滅とはほど遠い結果となった。ブラックマネーが、(一般の現金に)切り替えられて終わった可能性がある」(アリ氏)。
経済への影響も顕著だ。今年4~6月期のGDPは前年同期比5・7%増と5四半期連続で減速した。消費が足踏みしたもようだ。
長期的に見れば、預金が増加することで個人資産が可視化されて徴税が容易になることや、現金中心主義から脱却して電子決済が進むなどのメリットもあるものの「世界で嘲笑をもたらした」(デリー大学のルパリ・シャルマ教授)と、国内の専門家からは辛辣(しんらつ)な意見が相次いでいる。(ニューデリー 森浩)
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やめたほうがよさそうだ。
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