北朝鮮サイバー IT人材は「戦士」「万能の剣」 80年代から英才教育
- 国際
- 2017年10月27日
ソニーの情報流出、バングラデシュの銀行や韓国の仮想通貨取引所への金銭狙いの攻撃、米電力会社の偵察…。近年、北朝鮮の関与が疑われる深刻なサイバー攻撃が相次いでいる。北朝鮮のハッキング能力は「米中央情報局(CIA)に匹敵する水準」(専門家)との指摘もあり、警戒感が強まっている。(外信部 板東和正)
北朝鮮では、パソコンやインターネットの熟練者は「IT人材」ではなく「サイバー戦士」と呼ばれる。元韓国国防省北朝鮮情報分析官で拓殖大客員研究員のコ・ヨンチョル氏は「ITはビジネスや勉学のためではなく、国のために戦い他国を攻撃するためにあるという考えがある」と強調した。
「金融機関のネットワークをまひさせるにはどうしたらいいか」「情報を抜き取るには…」
北朝鮮の「サイバー戦士養成学校」の異名を持つ金一(キムイル)軍事大学(平壌)。最新のパソコンが並ぶ講義室で、同大の研究者が海外から取り寄せたハッキングプログラムを紹介しながら、他国の金融機関のシステムへの攻撃手法や機密情報を盗む方法などを教える。学生たちは真剣な表情でパソコンとにらみ合いながら、熱心に耳を傾ける-。
一見普通の授業風景だが、実態は「犯罪集団」の育成と変わりはない。同大学を知る関係者は「金一軍事大の学生は、外国製のハッキングシステムをインターネットで手にいれてそっくりに作る」と話す。
学生の多くは卒業後、攻撃を仕掛け他国を混乱に陥れるサイバー部隊に配置される「エリート」だ。
サイバー戦士は幼い頃からの“英才教育”で鍛えられる。まず、全国から優秀な成績をおさめる小学生をスカウト。平壌の金星(クムソン)第一・第二高等中学校(6年制)に入学させ、パソコン習熟の機会を与える。その後、実力を認められた生徒だけが、冒頭の金一軍事大のほか、「北朝鮮のマサチューセッツ工科大」と呼ばれる金策(キムチェク)工業総合大学や金日成総合大学に入学。サイバー攻撃の基礎を学び、訓練を受ける仕組みだ。
北朝鮮によるサイバー部隊の育成の歴史は、金正日氏が実権を持った後の1986年にさかのぼる。軍指揮自動化大学(現・金一軍事大学)が同年、コンピューターを扱える100人の専門要員を育成したのが始まりだ。95年には、専門のハッカー部隊を創設。金正日総書記は「20世紀が石油を使って砲弾を撃ち合う戦争なら、21世紀は情報戦争だ」と訓示を垂れた。
金正日氏の意志は、金正恩政権にも引き継がれた。
「サイバー戦は、核・ミサイルとともに軍事能力を担保する万能の剣だ」。金正恩朝鮮労働党委員長は指導者就任以来、こう強調し、サイバー部隊の育成に力を入れてきた。
近年は経済制裁に直面する中、北朝鮮のサイバー攻撃は外貨獲得の手段でもある。低価格でウイルス(武器)をネットで入手でき、資金難でも攻撃しやすい。英フィナンシャル・タイムズ紙(26日付)は、北朝鮮のサイバー攻撃を「低いコストで多大な攻撃を生み出す」と指摘した。
一言コメント
攻撃されないようにがんばってほしい。
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