特殊詐欺:悪いと思わず 摘発の少年ら、知人から誘われ
- 政治・経済
- 2017年9月6日
カネ・被害者と接触なく
特殊詐欺に関与して少年院に送られた少年3人が毎日新聞の取材に応じ、事件の状況や反省を語った。少年たちの教育を担当する法務教官は「特殊詐欺で入ってきた少年は、非行を犯した認識が薄い傾向があるので、被害者の立場になって考えさせ、更生を促している」と話す。【飯田憲】
法務省の統計によると、全国の少年院に詐欺の非行内容で収容された少年は、2006年の78人から15年は250人に増えた。少年の摘発が増えていることについて、検察幹部は「詐欺グループが意図的に未成年者を選び、『捕まっても刑務所に行かない』と誘っている」と明かす。「逮捕されても少年刑務所ではなく、少年院送致にとどまる」と安易に応じる少年も多いという。
取材に応じたのは、東京都八王子市の多摩少年院(定員数174人、8月末時点の在院者数約130人)の少年たち。同少年院では非行内容別で詐欺が窃盗に次いで2番目に多く、全体の約20%を占める。12年の約7%から急増しており、15年時点で全国52カ所の少年院で特殊詐欺による収容人数が最も多い。
被害者から現金を受け取る「受け子」だった元少年(20)は、勤務先の元同僚から「金になるバイトがある」と言われて関与した。空き家で待機し、郵便局員に偽名を告げて届け物を受け取ったり、お年寄りの家に赴いて「書類」が入った封筒を受け取ったりした。
封筒は、近くの喫茶店で見知らぬ男に渡して役目が終わる。4件に関与して20万円もの報酬を得た。警察に逮捕された時は「届け物を受け取っただけなのに」と理不尽に感じたが、捜査官から「中身は、お年寄りがだまされて入れた、なけなしのお金だ」と聞かされ、「自分が恥ずかしくなった」と振り返った。
受け子を差配する「指示役」だった少年(19)は地元の先輩から受け子に誘われたが、「捕まるリスクが高い」と感じ、「指示役なら」と請け負った。受け子に現金を受け取る場所などを伝えるだけで1件3万円の報酬を得られ、2週間で10件に関わった。詐取金に直接触れることはなく、被害者の顔も知らない。「悪いことをしているという認識はなかった」というが、逮捕後、事件の被害総額が2800万円に上ると知らされ、事の大きさに気づいたという。
受け子を集める「リクルーター役」だった元少年(21)は東京都内のクラブで知り合った人から頼まれ、7カ月で50人ぐらいを紹介した。計600万円もの報酬を得たが、遊興費として散財した。「目先の金が欲しかったし、金銭感覚が狂っていた」と明かした。
多摩少年院で生活指導を担当する倉田直登教官(25)は「特殊詐欺の少年は、暴走族や粗暴行為で少年院に送られる子と比べ、学校の成績も悪くないことが少なくない。だが、自分は勧誘され、だまされたという思いが強く、非行の意識も乏しい」と話す。
そのため、こうした少年たちには被害者の手記などを見せて被害に遭った人の気持ちについて考えさせたり、再び詐欺グループに誘われた場合の対処法などを学ばせたりし、再非行や再犯の防止を目指しているという。
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