「狭すぎる」退避施設不十分 玄海原発の防災訓練、離島避難に課題 6500人が参加
- 政治・経済
- 2017年9月5日
九州電力が来年1月にも再稼働を目指す玄海原発(佐賀県玄海町)の重大事故を想定した原子力総合防災訓練は最終日の4日、原発周辺の離島の島外避難や、県境を越えた住民の広域避難の手順などを確認した。玄海原発3号機の再稼働前の大規模な訓練は、今回が最後となる可能性がある。
訓練は3日と同様、佐賀県北部で地震が発生し、玄海原発4号機が炉心損傷し、放射性物質が放出されたと想定。国や佐賀、長崎、福岡3県などが合同で実施。地方自治体関係者や住民ら計約6500人が参加した。
北朝鮮による核実験の影響で、福岡県内で予定された放射性物質の緊急時モニタリング訓練は中止に。長崎県松浦市の鷹島では、天候不良のため県防災ヘリコプターでの避難がバスに変更になる一幕もあった。
佐賀県の山口祥義知事は「不安が100パーセントなくなることはない。むしろ持っておくべきだ」と述べ、避難計画の点検を続ける考えを表明。長崎県の中村法道知事は「離島にとどまることのできる放射線防護施設の必要性を実感した。反省点を生かしたい」と語った。
内閣府の担当者は記者会見で「年度末に訓練の評価をとりまとめる。課題があれば避難計画を改善する」と述べた。
最終日となる4日の原子力総合防災訓練は、九州電力玄海原発の周辺に点在する離島からの避難や島内での一時退避が主なテーマ。住民たちは船を使って島外に逃げたり、島内に備えられた放射線防護用のテントを設置したりした。実践的な内容だったが、退避施設の不十分さが露呈する場面も。想定と現実とのギャップが浮かび上がった。
玄海原発から約20キロにある福岡県糸島市の姫島では、飛来する放射性物質の除去フィルターを備えた「姫島福祉センターはまゆう」に住民が集まり、フィルターの稼働手順や除染テントの組み立て方を確認した。
市によると、センターはしけなどで漁船を出せない場合に一時的に身を寄せる施設で、島民が3日間過ごせる物資を備える。ただ、島には住民や学校の教員ら200人程度がいて、全員収容するには、廊下まで使っても1人1平方メートルの確保がぎりぎりという。
この日の訓練参加者は41人。避難スペースには余裕があったが、パート従業員の畑中美津子さん(56)は「1平方メートルは狭すぎて、座るくらいしかできない。高齢者が体調を崩さないだろうか」と首をかしげた。
玄海原発から約10キロの佐賀県唐津市の小川島では、消防団員約20人が小川小中学校の体育館内に放射線防護設備「インナーテント」を設置した。
テントは平常時、体育館の壁側に折りたたんで保管されている。使用時は放射性物質を除去する換気用ダクトの接続が必要。手順が複雑なため、日頃は不在の市職員が教える一幕もあった。完成後に子どもたちが内部に入ったが、冷暖房がない。教職員からは「夏場は子どもが熱中症になるのではないか」と不安の声も漏れた。市は冷暖房の導入を検討するという。
一時退避施設が未整備の離島もある。長崎県壱岐市では、原発からおおむね半径30キロ圏に位置する大島、長島、原島のほか、壱岐島南部の病院や福祉施設も整備対象となっており、一部で設置工事中だ。
壱岐島では、消防団員20人が芦辺港(同市芦辺町)に集合。海上自衛隊の輸送艇(420トン)に乗って島外に逃げた。今回は順調だったものの、過去の訓練では2年連続で高波のため船を出せなかった。島には一時退避施設がなく、原発事故時に出航できなければ、市は自宅待機を想定する。
訓練に参加した折田浩章さん(41)は「木造住宅で隙間があり、放射性物質が家の中に入ってこないか心配だ」と話した。
一言コメント
不安なく過ごせるようにがんばってもらいたい。
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