アニサキスの影響長引く水産売り場 稼ぎ頭の刺身が不振
- 企業・経済
- 2017年8月1日
首都圏のスーパーマーケット、鮮魚専門店で5月半ばからのアニサキス報道の影響が長引いている。量販店団体の統計全てで、水産部門低迷の中でも健闘していた刺身までもが落ち込み、5、6月の水産部門売上高は前年同月比2~4%減。業界では1、2カ月で影響は収まるとの見通しが強かったが、思わぬ長期化に各社気をもんでいる。
日本チェーンストア協会によると、水産部門の売上高はスルメイカやサンマ、秋サケなど大衆魚の不漁や冷凍魚の相場高が響き、2016年4月から17年3月の1年間にわたり前年同月割れ。その中でも刺身は「簡便化ニーズにより伸長」(同協会)していた頼れる存在だった。
しかし、アニサキス報道が過熱した5、6月、生鮮魚に加え刺身も一転して前年割れ。「売れる物がなくなってしまった」(大手スーパー広報)。魚好きが集まる鮮魚専門店でも「夏場の冷たいごちそうとして伸びていた」寿司や刺身が打撃を受けたという。7月もテレビやインターネットでアニサキス症が時折取り上げられ、水産部門は苦戦が続く。
一方、鮮魚の代わりに「漬け魚の売れ行きが好調など、これまでにない動きが出ている」と日本チェーンストア協会。ウナギかば焼きも伸びており、「加熱調理品へニーズがシフトしている」(同協会)とみる。
同協会は「減収要因にアニサキス報道を挙げる企業は減ってきている」とし、事態は沈静化に向かいつつあるようだ。ただ「SNSなどこれまでにない方法で情報が拡散される時代。報道の影響はしばらく続くのでは」(同)と警戒する。
スーパーの現場では、抜本的な解決策がないことに手をこまねいている。大手スーパーの担当者によると、「目視確認は徹底しているが、バックヤードは忙しくブラックライトの導入も厳しい」。中堅スーパーは「いったん生魚から離れた客をどう取り戻すかが課題だ」と気を引き締める。
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