福岡唯一の「名水」に打撃 月に2千人が訪れる人気スポット 豪雨被害の東峰村、岩屋湧水
- 企業・経済
- 2017年7月27日
九州北部に甚大な被害をもたらした豪雨で、福岡県で唯一「平成の名水百選」に認定されている同県東峰村宝珠山の岩屋湧水の被害が心配されている。湧水地はJR日田彦山線のトンネル内にあるが、周辺は濁流による流木や土砂が散乱し、近づくことも難しい状況。湧水地と近くの水くみ場までの配管も流されている。名水は地域活性化や農業にも貢献してきただけに、地域住民らは気をもんでいる。
岩屋湧水は、JR日田彦山線彦山-筑前岩屋間の釈迦(しゃか)岳トンネル内で1日1万5千トン湧出し、2008年に環境省から「名水」に指定された。硬度約30度の軟水で、癖がなくまろやかな味が特長。約100メートル離れた筑前岩屋駅前の水くみ場まで配管をつなぎ、自動給水機で約30リットル100円で販売していた。お茶やコーヒー、日本料理に合うと評判で、県内外から月に約2千人が訪れるほどの人気だった。
豪雨では、同駅近くを流れる川が氾濫。大量の土砂が駅舎まで押し寄せ、湧水の配管が流失した。湧水地がある釈迦岳トンネルにも土砂が入ったという。トンネルを管理するJR九州は湧水地の状況を確認できておらず、水くみ場を管理する村の第三セクター「宝珠山ふるさと村」の大坪勝二専務も「湧水地そのものがどうなっているか分からない。再開のめどはまったく立たない」と説明する。
湧水は近くの田んぼにも配管が延伸され、農業用水としても利用されてきた。農家の男性(69)は「水が出ないので稲も育てられない。名水を求めて村を訪れる人も少なくなってしまう」と肩を落とした。
JR九州によると、彦山-筑前岩屋間を含む添田-夜明間では豪雨による被害が多数確認され、運転見合わせの状態。同社は、トンネルも含めて「復旧にはかなりの時間を要する」としている。住民らは美しい水が戻る日を信じている。
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