- 国際
- 2017年7月10日
ポーランドのクラクフで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は8日、古代東アジアの交流にまつわる沖ノ島など、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)を構成する8つの史跡全てを世界文化遺産に登録することを決めた。
事前審査をしたユネスコ諮問機関のイコモスが5月、沖ノ島と周辺の岩礁を登録し、本土側の宗像大社など4つを除外するよう求めた勧告を覆す一括登録となった。日本国内の世界遺産は昨年の「国立西洋美術館」(東京都)に続き21件目。文化遺産が17件、自然遺産が4件となる。
宗像・沖ノ島は、沖ノ島と3つの岩礁(福岡県宗像市)、九州本土の宗像大社(同)、新(しん)原(ばる)・奴(ぬ)山(やま)古墳群(福津市)など8つの国指定史跡で構成する。
沖ノ島は、九州と朝鮮半島の間に位置し、4~9世紀に航海安全や交流成就を祈る国家的祭(さい)祀(し)が行われた。入島制限の禁忌が守られ、自然崇拝に基づいた古代祭祀の変遷を示す遺跡がほぼ手つかずで残る。奉献品約8万点が出土し、“海の正倉院”とも呼ばれる。
宗像大社は、島そのものが神体である沖ノ島の沖津宮と沖ノ島を拝む遥(よう)拝(はい)所(しょ)のある大島の中津宮、本土の辺(へ)津(つ)宮(みや)からなる。古墳群は信仰を育んだ豪族、宗像氏の存在を物語っている。
政府は、島を信仰対象とする伝統が受け継がれている世界でもまれな例として昨年1月、推薦書を提出。イコモスは、沖ノ島の考古学的価値を認めた一方、現在の宗像大社に古代の信仰が継承されているとは確認できないとして、「『神宿る島』沖ノ島」への名称変更を求めていた。
政府は来夏の世界遺産委で、キリスト教の信仰が禁教下で継続されたことを示す「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎県、熊本県)の登録を目指している。
コメントする