覚醒剤使用に無罪 「尿の採取手続きは違法」 地裁高崎支部判決
自宅で覚醒剤を使用したとして覚せい剤取締法違反の罪に問われた群馬県高崎市の男性(41)の判決公判が19日、前橋地裁高崎支部であった。永井秀明裁判官は、覚醒剤使用を立証するために県警が作成した尿の鑑定書について「尿の採取手続きに重大な違法がある」と証拠能力を否定し、「自白の真実性を補強する証拠は存在しない」として無罪を言い渡した。
判決などによると、男性は昨年1月8日に自宅で覚醒剤を身体に注射したなどとして起訴された。高崎署の警察官が同9日午後6時10分ごろに男性への職務質問を始め、同8時55分ごろに保護した。翌10日午前1時50分ごろに保護を解除し、捜索差押許可状を基に男性の尿を採取した。
検察側は職務質問が任意だったのに加え、男性が発進した車に向かうなど精神錯乱だったため保護したと主張。一方、弁護側は車に突進した事実はないなどとして精神錯乱ではなかったと主張し、保護の必要がないのに拘束して採尿したことは違法と訴えた。
永井裁判官は3月15日付の証拠決定で、職務質問に関しては適法とする一方、弁護士の指示に従って動画を撮っていたことなどから「精神錯乱や自傷行為の恐れがあったとは認められない」と指摘。身体を拘束したのは明らかに逮捕に当たるとし「典型的な無令状、無要件の逮捕だったと認められる」と強く批判した。「保護と関連性がある尿の採取の手続きは違法だった」として尿の鑑定書の証拠能力を否定した。
弁護側によると、検察側は論告をしなかったという。弁護人は「違法に集められた証拠を排除した本判決を、人権保護の観点から高く評価する」とした。
前橋地検は「判決内容を詳細に検討し、適切に対応したい」とコメントし、県警は「判決が確定していないため、現時点ではコメントを差し控える」とした。
コメントする