フィリピンのバナナ輸出、2年連続減少 16年、治安悪化と政策のぶれ響く
- 国際
- 2017年6月13日
フィリピンはバナナ農業が苦境に立たされている。同国の統計局によると、2016年の輸出額は296億ペソ(約660億円)で、15年の304億ペソから約2%減少した。14年は510億ペソで、2年連続の減少となった。関係者は産地の治安悪化と政策の一貫性のなさがさらなる減少につながりかねないと訴える。現地紙ビジネス・ワールドなどが報じた。
同国においてバナナはココナツに次ぐ輸出の主要農産品だ。かつてはエクアドルに次いで世界2位の輸出規模を誇っていたが、近年はコスタリカに抜かれて3位となっている。
関係者は、既存の土地契約を軽視する政府の姿勢や、主要産地のミンダナオ島での反政府武装勢力による襲撃や強奪事件の増加などがバナナ農業の弱体化につながっていると指摘した。
現地紙マニラ・タイムズによると、ミンダナオ島ではフィリピン共産党系の新人民軍(NPA)によるバナナなどの大規模農園に対する襲撃が続いている。今年4月には同島ダバオにあるバナナ輸出大手ラパンダイ・フーズの施設が襲撃される事件が発生した。この事件で同社が受けた被害総額は、推定20億ペソに上ったもようだ。
また、ドゥテルテ政権が政府の関係する契約を尊重する姿勢を示しているにもかかわらず、農地改革省の一部高官が、農地改革法に基づきバナナ農園が締結した土地取得に関する契約を破棄させようと動いていると指摘する専門家もいる。
ある大規模農園経営者によると、現在、中国など大市場でバナナ需要が拡大中で、フィリピンのバナナ農業は成長の好機を迎えている。しかし、この経営者は、国の一貫性のない政策に足を引っ張られているとし「悪天候には技術で対応できるが、政策のぶれには対応しようがない」と不満をあらわにした。
バナナ生産大手タグム農業開発(TADECO)のアレックス・バロリア最高経営責任者(CEO)兼社長も、業界が本来であれば不要なはずの政治的な懸念に対処する必要に迫られていると指摘する。同社はフィリピン矯正局と合弁事業契約を締結し、ダバオ刑務所内でバナナ農園を運営している。既に約10年が経過した事業だが、今年5月に入り、司法長官室が同事業を違法とする見解を発表した。
バロリアCEOは、合法な契約のもと議会の承認も得た事業だとして「政府に邪魔をされては世界市場での競争力維持などできるはずがない。このままでは投資家に逃げられ、残された労働者と家族が泣くことになる」と訴えた。
17年1~3月のフィリピンのバナナ輸出額は57億ペソで、前年同期の68億ペソから大幅に減少した。関係者が主張するバナナ農業弱体化に歯止めをかけられるか、政府の対応が注目される。(シンガポール支局)
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