慰安婦財団ピンチ、日韓合意見直しで事業休止も 2理事辞任、追随の動き
- 国際
- 2017年4月25日
旧日本軍の従軍慰安婦問題を巡る日韓合意に基づいて元慰安婦支援事業を担う韓国の「和解・癒やし財団」が、事業休止に追い込まれる恐れがあることが、財団関係者への取材で分かった。韓国大統領選(5月9日投開票)の有力2候補は日韓合意に批判的な立場で、「新政権の支援がなければ事業継続は困難」との見方が財団内で強まっているためだ。こうした情勢を背景に11人の理事のうち既に2人が辞任。さらに数人が追随する意向を示しているといい、昨年7月末に発足した財団は1年も経ずに存続の危機に立たされている。
理事会は日韓関係の専門家や弁護士、政府当局者らで構成。関係者によると2人が3月までに「個人的な事情」を理由に辞任を申し出て、了承された。
大統領選で首位争いを展開している革新系最大野党「共に民主党」候補の文在寅(ムンジェイン)氏(64)と中道の第2野党「国民の党」候補の安哲秀(アンチョルス)氏(55)は、いずれも「元慰安婦に無断で合意した」などとして再交渉を主張。どちらが当選しても数カ月間かけて合意内容や経緯を検証し、日本政府との再交渉の可能性を探る公算が大きい。このため、「少なくともその間は事業を休止せざるを得ない」(理事の一人)との悲観論が、財団内で広がっているという。
加えて、朴槿恵(パククネ)前政権による日韓合意に関して国民の約7割が再交渉を求めるという世論調査もある中、最近は個々の理事への批判も強まっており、こうした事情が、2人の理事の辞任や同調する動きにつながったとみられている。
財団はこれまで、日本政府が拠出した10億円を原資に、2015年12月の合意時点で生存していた元慰安婦46人(現在は38人)のうち34人に1人当たり1億ウォン(約950万円)、死去していた199人のうち15人に同2千万ウォン(約190万円)を支給。元慰安婦の遺族らは所在不明の人が多いため、捜すためには政府の支援が不可欠という。
「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した合意の再交渉に日本政府は応じない構えで、日本の外務省関係者は「選挙中の公約や発言が、そのまま新政権の政策に反映されるとは限らない。国際的に評価された国家間の合意を覆すのは簡単ではない」と指摘。しかし次期大統領は世論を背景に合意に対して厳しい姿勢で臨むのは必至で、先行きは見通せない状況だ。
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