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サプリメントを盲信する人に教えたい基本 価格のからくりと飲み合わせの裏側


私たちの生活に深く入り込むサプリメント。でも、ちょっと待って。高いお金を払って飲み続けているそのサプリ、大丈夫ですか?

郵便局の窓口で切手を少々まとめ買い。笑顔と共に、いつものティッシュに替えてオマケに差し出されたのは、サプリメント(サプリ)のサンプル。注文用はがきも同封されていた。

気がつけば、世の中にはサプリがあふれていた。新聞を開けばサプリ、コンビニにもサプリ、郵便局にもサプリである。
日本ではサプリにはっきりした定義がない。厚生労働省の認識は「『特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品』が該当すると考えられる」。薬を連想させるような見かけだが薬ではない。位置づけとしては「食品」だから、医薬品に似た錠剤やカプセル、通常の食材から菓子、飲料までを幅広く「サプリ」と呼ぶこともある。

そこから1991年に特定保健用食品、2001年に栄養機能食品、15年には機能性表示食品として機能性表示が可能になったものが抜けた感があるが、言ってみればこれらもサプリだ。機能性表示が認められた3分類に属するものを除けば、よく言えば百花繚乱、悪く言えば玉石混交。100円均一ショップで売られているものから1瓶が数万円もするものまで、価格帯も幅広い。

「日本のサプリは自己責任で購入するしかない。消費者はサプリを見る目を養ってほしい」

こう助言するのは、水戸中央病院の法人医療技術部部長で薬剤師の酒井美佐子さんだ。

●高価ならば良いか?

価格のバラツキには理由がある。まず成分自体に差があること。主たる成分には天然物質と合成物質があり、前者のほうが価格は高い。例えば、ビタミンCのサプリの表示で「アセロラ」とあれば天然物質か抽出物がそのまま入っている。物質名で「ビタミンC」と入っているのは合成物質だ。合成物質で最も質が高いのは「医療用医薬品」として用いられるものだ。

原材料は含有量の多い順に表示されているが、成分以外に、成型や増量、希釈が目的の「賦形剤」を含む添加物が上位に来ることがある。例えば、乳糖、結晶セルロース、蔗(しょ)糖エステルなどがそれ。微量栄養素であれば添加物が多いのは仕方ないが、肝心の成分はごくわずかという商品も少なくない。

製造原価以外では、医師の監修、著名人の広告、テレビや新聞を使った宣伝、チラシやダイレクトメールの大量配布といったものが価格を押し上げる。化粧品や衣類などの消費財と一緒で、高価であることが必ずしも質や満足度に直結するというわけではなさそうだ。

最も問題なのは、サプリの場合、副作用があってもそれが前面に出てこないことだ。

効果を高めるにはそれなりの使い方もあるが、サプリは「食品」なので1日の摂取量だけが表示され、効果的な使い方を明示することもできない。適正な使用のためには、薬を服用中の場合の相互作用やアレルギーのチェックは欠かせない。

●服薬中の人は要注意

酒井さんが挙げた特に注意すべき相互作用は二つ。まず、血栓の予防薬として多く使われるワルファリンの作用を無効にしたり高めすぎたりするサプリ。もう一つは、多くの医薬品の効能を弱めるセントジョーンズワートというハーブだ。うつ症状に効果があるとされるセントジョーンズワートが商品名になっているサプリならわかりやすいが、ハーブティーなどを調合してもらう場合、気分の落ち込みや不眠などを訴えると知らないうちにブレンドされてしまうことがあるので要注意だ。

そもそも、サプリはどんな人に必要なのか。

サプリは大きく三つに分かれる。厚労省の「国民健康・栄養調査」によれば、現代の日本人に不足している栄養素は食物繊維、カルシウムやビタミンC。女性の場合、鉄や亜鉛も不足していることが多い。だから、食生活と照らし合わせてベースサプリを補充するというのは妥当な使い方だ。

●食生活の見直しが基本

東京医科歯科大学医学部附属病院臨床栄養部副部長で管理栄養士の斎藤恵子さんは、

「植物を育てるにもまず土が大切で、その上に肥料を与えるように、まず土台となる食事を振り返ってほしい。食事が乱れているのをサプリでカバーしようとする頼りすぎは禁物」

と注意を促す。「やせる」を目的にしたサプリには、特に注意が必要だと斎藤さん。

「ある特定の食品を取ってやせるのなら、それは栄養になる物ではない。そもそも食品ではなくて、“毒”であると考えたほうがいい」

過去には、中国製のダイエット系健康食品に医薬品の成分が含まれていて深刻な健康被害をもたらしたこともある。前出の水戸中央病院・酒井さんは、

「ダイエット系のサプリに限らず、海外製品には危険な製品が交じっていることがあり、肝機能障害や急性の胃腸障害で下痢を起こす危険もあり得る」

と警鐘を鳴らす。

薬に近い位置付けのサプリの場合、医師、薬剤師、管理栄養士など医療の専門家の手を借りたほうがいい。身近なのは薬局やドラッグストアだ。

国は16年から、個人の主体的な健康の保持増進への取り組みを積極的に支援する機能を有する薬局を「健康サポート薬局」と位置付け、普及を推進している。ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングスが展開する「マツキヨラボ」などがそれだ。酒井さんは言う。

「サプリの販売促進という目的もあるが、医療者が関与して対面で販売する以上、信頼は担保できるのではないか。こうした健康サポート薬局や“かかりつけ薬局”を活用してほしい」

医師や歯科医師がサプリについて助言するクリニックも増えている。循環器専門医として食事指導に力を入れてきた登坂正子さんは16年末、未病対策を軸にした自由診療のホリスティキュア メディカル クリニック(東京都中野区)を開院した。

「病気の引き金になるミネラルバランスの崩れは、個々人の体質、消化吸収能力などにより差が出てくる」と語る。

そこで、隣接する「栄養ケアスタンド」では、体内の有害金属やミネラル、健康や美容に悪影響を及ぼす糖化の進行度、さらには食生活から起こしやすい不調を推測する独自のボディーチェックに基づいて、その人に最適な栄養やサプリを助言する。

●有効性は必ずしも…

ブルーベリーが目に良いからと毎朝大量のジャムをパンにつけ、糖分過剰で糖尿病が悪化した、イチョウ葉が認知症に良いからと拾ったイチョウの葉をお茶にして飲んで有害成分のギンコール酸による副作用を起こした、というのは実際にあった事例だ。健康のための商品で健康被害が生じては本末転倒。成分だけを抽出して精製してあるサプリは使い勝手がいいとはいえ、適切なものを選び、適切な使い方をしなければ意味がない。

国立健康・栄養研究所が運営するサイト「『健康食品』の安全性・有効性情報」には素材情報データベースがあり、サプリやその成分の安全性、有効性を調べられる。よく売れているサプリの成分についても「調べた文献の中で見当たらない」
「さらなる検証が必要である」といった情報が掲載されている。

(ジャーナリスト・塚崎朝子)

AERA 2017年4月24日号


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