保険営業担当が「元が取れる」と紹介する商品は、なぜオススメできないの?
- 企業・経済
- 2017年4月11日
険に明るい保険会社の人が「入らない保険」の代表的な例として「医療保険」をとりあげました。今回は、医療保険以外で、積極的に販売されているにもかかわらず、評価が低い商品を列挙します。
まず、死亡・入院・介護・就業不能など、「複数の保障機能をセットにした保険」です。仕組みがわかりづらく、保険料が割高であることが多いからです。
保険に限らず、金融商品全般に言えることですが、営業担当者の説明を聞いても、「よくわからない」と感じる商品は、ほとんどハズレです。複数の保険会社で商品設計に関わった専門家には「難しいということは、保険会社にとって大切なことなんです」と言う人もいるのです。
わかりにくい商品を提示されると、契約の是非を担当者の好感度などで判断するお客様もいるため、結果的に高い手数料が取りやすくなるからだと思います。読者の皆さまは「素人が自力で説明できない保険はダメ」と覚えておいていいでしょう。
「元が取れる」保険はなぜオススメできないのか?
次に貯蓄目的で案内されている保険です。一般に、子供が生まれたら「学資保険」で進学資金準備をするものだし、老後資金準備には「個人年金保険」が最適だと認識している人も少なくないかもしれません。
ところが、保険をよく知る保険会社の人や、お金の運用に明るい有識者たちには、これらの保険は不評です。どちらも低い金利で長期契約を結ぶことになるため、金利の上昇や貨幣価値の変動などに対応できないリスクに対し、お金の殖え方が少なすぎると見られているのです。
低金利で長期契約を結ぶことが好ましいのは、住宅ローンなどお金を借りる場合であって、お金を殖やしたい人が選ぶ方法ではないというわけです。
貯蓄性が語られる保険には、「養老保険」「終身保険」「変額保険」もあります。「養老保険」は、一定期間の死亡保障があり、満期には保険金額と同額の満期金が支払われる保険です。たとえば、10年満期300万円の養老保険では、加入後10年以内に死亡した場合300万円が支払われ、何事もなく10年後を迎えた場合には、300万円の満期金が支払われます。
営業マン時代の私は、このプランで、10年分の保険料総額が300万円に届かない場合「お客様が損をしない保険」だと考えていました。また、保険料総額が満期金より高くなる場合であっても「ほとんど元が取れる。死亡保障を持つための実質的なコストが極めて低い保険」と理解していました。
しかし、それは間違いでした。前回の記事に書いたように、将来のお金の価値は額面より“必ず”低く評価しなければならないため、満期金と保険料総額を単純比較すること自体、やってはいけないことなのです。正しくは「死亡保障にもお金がかかる分、積み立てに回るお金は少なくなる」「営業担当者や代理店の手数料が高いので、大きなマイナスから積み立てを始めることになる」と見るべきなのです。
「終身保険」の仕組みは「養老保険」と同じで、満期が延びた保険と理解したらいいので、貯蓄性に関する評価も同じです。もちろん「外貨建て」の養老保険や終身保険でも同じことです。
「変額保険」も、保障部分と積み立て部分の双方からできていて、特徴は積立部分のお金を投資信託などで積極的に運用する点にあります。そのため、まずは「死亡保障があるぶん、貯蓄性は下がる」と見ることができます。それから積立部分についても「保険会社を介さず、投資信託で積み立てるほうが有利」と見るのが正解です。
保険商品に支払った手数料、「生命保険控除」しても取り戻せない
私が営業マン時代を振り返り、反省しているのは、「保険会社はどのようにお金を運用しているのか」と、考えてみなかったことです。
保険会社は、お客様から頂いた保険料を主に(日本の)国債や外国債券で運用しています。つまり、保険商品で貯蓄する人は「保険会社に手数料を払って債券などを買ってもらう」ことになるのです。
ほかの金融機関で債券などを買うより手数料が安いのであれば、それもいいでしょう。ところが、保険商品の手数料は、金融商品に明るい人が「破格!」と驚く高さです。「生命保険料控除」により税金が安くなる利点を加味しても、失点を挽回できない水準なのです。
1990年代半ば頃まで、保険でお金が殖やせた時代があったのは事実です。ただ、それは保険商品の仕組みが特に優れていたわけではなく、長期債券の金利が高かったからなのです。
もとより、進学時や老後でも何でも構いませんが、資金需要が発生する時期に応じた「最も有利な貯蓄手段」など誰も知らないはずです。金利や貨幣価値の変化を予知することは不可能だからです。
したがって、消費者にできるのは、明らかに不利と考えられる手段を避けることくらいなのです。お金を殖やす際、保険商品の高い手数料は、確実かつ大きなデメリットです。だからこそ、販売側の人たちが売りたがるのだ、と見てもいいでしょう。
次回は、テレビCMなどでは知ることができない、保険をよく知る保険会社の人たちが愛用している保険について触れます。
(オフィス・バトン「保険相談室」 代表 後田亨)
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