<福岡空港民営化>出資巡り、市長と自民の対立激化
- 政治・経済
- 2017年3月14日
福岡空港民営化後の新たな運営会社への出資を巡り、福岡市と市議会最大会派・自民党の対立が激化し、国土交通省が民営化スケジュールへの影響を懸念する事態になっている。市は既に出資しない方針を国へ伝えているが、自民は市に出資を事実上義務付ける条例案を議員提案しており今月28日の議会最終日に可決される見通しだ。
市は「福岡空港ビルディング」の所有株式売却で得た約64億円の一部で基金を設け、空港周辺のまちづくりなどに活用する条例案を今議会に提案したが、新会社への出資を求める自民が反発し否決された。対抗する形で自民が9日に提出したのが新会社への出資に備え基金を設ける条例案だ。「市の責任を果たすため」出資に努めることを義務づける内容となっている。
自民は空港の安全性や利便性確保のため出資して新会社に関与する必要があり、出資の配当で地域振興ができると訴える。だが、高島宗一郎市長は「安全性確保はこれからも国がすることになっている。その達成のため出資するというのは論理の飛躍がある。出資してもできることは非常に限られている」と対決姿勢を示す。
こうした状況に国土交通省は困惑している。担当者は「『市は出資できない』とは言わないが大きな影響がある」と懸念する。同省は空港民営化のルールを定めた実施方針を3月中にも公表する予定で、新会社への自治体の出資比率を10%までとする方針。だが「出資比率は福岡県からの希望を受けて半年近く協議を重ねた。市が出資することになれば改めて複雑な調整をしなければいけない」と話す。その場合、実施方針公表や今夏ごろとみられる運営会社公募の入札がずれ込み、2019年4月ごろの民営化開始が遅れる恐れもあるという。
高島市長と自民のあつれきは過去の選挙の遺恨が伏線となっているとの指摘もある。14年11月の市長選では自民議員の一部が高島市長の対立候補を応援した。翌月の衆院選では福岡1区で自民市議団が推す候補の対抗馬を高島市長が支援し、市議団が抗議文を出す事態となった。
さらに、今回の市の基金条例案否決後、自民市議3人が高島市長支持を表明し新会派「自民党新福岡」を結成しており、綱引きは激しさを増している。自民のベテラン市議は「議会への説明や意見交換が足りないのでこういうことになった」と不満を強めている。
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