絶えないニセ電話詐欺 「上京型」増加、膨らむ被害
- 詐欺・悪徳商法
- 2017年2月9日
電話を受けたその日のうちに、70代女性は電車に飛び乗った。「居ても立ってもいられなかったんじゃないか」。ニセ電話詐欺で現金600万円をだましとられた女性の心情を捜査関係者が推し量った。
1月15日午後7時半ごろ、三養基郡内の自宅に息子をかたる男から電話があった。「風邪を引いた」「会社のお金を使い込んだ」。女性はわが子と思い込み、身を案じる。バッグに大金を詰め込むと、指定された福岡市のJR博多駅に向かった。親族を装って特定の場所に呼び寄せる「上京型」と呼ばれる手口だった。
佐賀県警生活安全企画課によると、2016年に把握したニセ電話詐欺69件のうち、上京型は10件。前年の3倍近くになり、被害額も2959万円増えて4759万円に上った。ニセ電話詐欺は今年も1月末時点で5件発生し、被害額は計807万円。上京型はくだんの1件にとどまっているが、被害総額の中では大きな割合を占め、前年同期を上回る要因になっている。
「被害者と対面する手口は、実行する側からすれば摘発につながるリスクが高い。まとまった額でなければ割に合わないと考えている」。捜査関係者はこう話し、被害額が膨らむ一因とみている。「日をまたぐと犯行に気付かれる恐れがあるため、その日のうちに実行する傾向がある。『お母さん助けて』と、泣き落としを図る者もいる」
被害者が明かした経緯からは、冷静さを保てなくなる様子が垣間見える。「『夕方までに』と言われ、普通の精神状態ではいられなくなった」「『今日中に』とせかされて焦った」
被害者の一人は定期預金を解約して用立てた。「老後の蓄えだったのに」。気落ちして自責の念にかられる様子に捜査関係者は「立ち止まって確認していれば…」。やりきれない思いを口にした。
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